CASE STUDY

ProJet® 3500HDMax / 部品製造

3Dプリンター活用を自社の強みに
~最適な活用で生み出した効果とは?~

シナノケンシ株式会社(以下、シナノケンシ)は、家電製品や自動車などの精密モータを主軸とし、最先端の産業ソリューション機器や福祉・生活支援機器の製造・販売を行う企業です。2012年12月から3Dプリンターを導入し製品試作に活用されています。導入のポイントとどんな効果が出ているのか取材しました。

製造業

シナノケンシ株式会社

シナノケンシ株式会社

最先端のテクノロジー開発に積極的に取り組むシナノケンシ

kenshi_image01.jpgシナノケンシは、1918年に信濃絹糸紡績株式会社として設立し、1962年より精密モータ製造事業を開始、長年家電製品や自動車など多様な分野の精密モータの製造を中心としたビジネスを展開してきました。
近年では主軸事業である精密モータ事業の他、時代のニーズに合わせた最先端ロボットやドローンに使用するモータの開発、産業ソリューション機器、医療福祉等の福祉生活支援機器の製造開発にも積極的に取り組んでいます。

本社のある長野県上田市を営業・生産拠点とし、1982年からアメリカ、ロサンゼルスに海外で最初の販売拠点を構えてから約34年間、アメリカ、中国、インド、ヨーロッパへ進出し世界に9つの販売拠点と3つの海外生産工場で事業を行うグローバル企業です。

 

お客様が求める「安心」「快適」なモーター開発

シナノケンシの製品開発は、品質を重視したお客様固有のカスタマイズ品の開発が中心です。お客様が求める「安心」「快適」なモータ開発のため、設計・加工・組立の一貫生産体制を整え、駆動・制御系から機構設計までを含んだシステム部品のトータル提案を推進しています。

シナノケンシの製品開発ポイント

・お客様のお困りごとを解決する製品開発

・高機能化を推進

 

製品開発についてモータ技術センターのセンター長である臼井氏は、「当社で生産する製品は、現地のお客様と設計者が直接会話して製品開発を行います。日本の企業に対しては日本の設計者が、中国の企業に対しては中国の設計者が担当する、これが当社のルールとなっています。」

お客様と直接会話することで信頼関係を作り出し、モノ作りを遂行するシナノケンシはお客様の困りごとを解決する質の高いモータを提供することで、世界中の人々の生活に安心と快適性をもたらす高品質な製品作りを行っています。

製品開発の中で、2012年から「3Dプリンター」を活用。ではどの様に活用しているのでしょうか。

3Dプリンターユーザーの新機種選定ポイントとは?

kenshi_image02.jpg3Dプリンターの主な活用用途は製品の試作。3Dプリンターを導入する以前は、射出成型や切削を社外へ依頼していました。

導入を検討をし始めたのは2012年ごろ。社内でロボットや医療など新たな分野の開拓が開始されたことにより、新規の設計や試作件数が増え、外注で試作する際に必要となるコストの増加と納期の長期化という問題が浮かび上がり、「最近よく耳にする3Dプリンターを導入してみてはどうだろか」と課題への対策として2012年に3Dプリンターを導入し、社内で試作する取り組みを開始しました。

「当時はまだ3Dプリンターブームが起きる前で、業界でも3Dプリンターの導入は早いほうでした。」と臼井氏。
グローバルに営業拠点もあることで、最先端のテクノロジーを積極的に取り入れることはシナノケンシの企業姿勢でもあります。
3Dプリンターの運用を開始し3年程経過した2015年ごろ、「もっと細かい部品を3Dプリンターで造形できれば、活用の幅が広がるのでは?」と社内で新機種の導入検討が始まりました。

kenshi_image03.jpg新たな機種選定にあたり、特に重要視したポイントが2点あります。

①造形精度

「モータ部品では鉄心と銅線を絶縁するためにインシュレータという薄い樹脂部品が必要となります(※下記写真参照)。実際に銅線を巻いて形状確認を行うことができることが新機種選定の基準でした。」と松井氏。

「ProJet3500HDMaxで造形した鋭く尖ったエッジ部を見たときにこれだ!と思いました。」と臼井氏。この造形精度には他部門の社員も魅了され、自部門の設計試作にも適用できると考えました。

②保守サポート

 機器の故障が起きて試作造形が出来なくなるダウンタイムが、製品開発に大きな影響を及ぼします。
以前利用していた3Dプリンターは、不具合が起こると1週間近く稼働しないこともありました。

そのためシナノケンシは、保守サポート体制を重要視した選定を実施。

「サポートの窓口がどのように運用されているのか目でみて確認したい」と臼井は保守を担当するJBサービス株式会社(以下、JBサービス)の保守・運用センター”SMAC"のある神奈川県まで足を運びました。
その中で、JBサービスが提供する遠隔保守サービス「リモート・アシスト」に魅力を感じました。

このサービスはIoT技術で保守拠点から離れた場所にある3Dプリンターの状態を監視します。
不具合発生時にはアラート・メールが配信され、JBサービスの技術員が監視画面に接続して、ログを解析・原因を調査し、お客様に連絡、リモート・メンテナンス・サーバーを通じて、復旧作業を行います。また必要に応じて、後日技術員が訪問し、点検・部品交換などの作業を行います。
これにより従来のサービスと比較して現象の確認、原因の調査、問題解決までを速やかにサポートすることができるため、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。

保守サポートについて、グローバル開発本部モータ技術センターにて3Dプリンターの導入から運用を担当している松井氏は「製品試作の点数が多いシナノケンシでは、ほとんど毎日フル稼働で造形を行っており、万が一のトラブル時に数日間試作を作れなくなるリスクだけは避けたかったのです」と語ります。

 

「リモート・アシストサービス」利用までに解決したこと

シナノケンシがProJet3500HDMax導入に大きく影響をもたらした「リモート・アシスト」。
このサービスを利用するためにはインターネットを経由して外部から社内機器へネットワーク接続が必要でした。シナノケンシではセキュリティ上のルールから社内ネットワークに外部から接続することが難しく、一旦は利用不可とされていました。

しかし「ダウンタイム短縮のためにどうしてもこのサービスを利用したい」臼井氏は強く思い、3Dプリンターと制御PCを社内ネットワークから切り離して運用する方法でセキュリティ上の問題を解決しました。遠隔からの操作は機器に取り付けられた通信ボックスで行います。

リモート・アシストの利用にあたり、「当社のように、都心部から離れた地方の場合は、
サポートを呼んでも来るまでに時間がかかります。遠隔操作で対応できればタウンタイムを最小限に抑えられると実感しました」と臼井氏は言います。

3Dプリンターの活用で得た効果と付加価値

最先端技術を積極的に取り入れるシナノケンシは、2012年に3Dプリンターを導入したことで試作コスト削減、開発時間の短縮の実現はもちろんのこと、付加価値がありました。

①お客様先での商談の具体化・迅速化
 商談時にお客様先へ造形サンプルを持ち込むと説明が具体化されてその場で検証しフィードバックしてもらえます。
 明確な意思疎通で手戻りが減り、納期も縮まり、お客様の求める製品をより早く届けられ、お客様満足度も向上しました。

②海外拠点とのコミュニケーション促進
 アメリカの拠点には日本本社と同じProJet3500シリーズが設置され、同じように製品開発で活用されています。
 海外とのやりとりは言語や文化の違いで図面上だけでの意思疎通は難しい場合がありましたが、各拠点で同じ機械で出力した同じサンプルを見て会話することでイメージの相違が無くなり、手戻りの頻度が減少しました。

 

2015年12月に二代目の3Dプリンターとして新たにProJet3500HDMaxを導入。実際にProJet3500HDMaxは造形精度が高く、0.2mmほどの薄板も問題なく造形できます。」と松井氏はいいます。

ProJet3500HDMax導入後は今まで再現が難しかった形状が高い再現性で造形できるようになり、他部門からの依頼が増えているそうです。 特に治具の製作は、外注を利用すると10cmほどの形状でアルミの削り出しで10万円ほどかかるものが、3Dプリンターであれば4000円~5000円ほどで造形できるため、同じ造形物を作る場合は大きなコスト削減につながるのです。

「今後は設計部門だけでなく生産技術・製造部門へと展開し、治工具等への活用をより一層進め、製造のリードタイム短縮を進めたい」と松井氏。

このように各部門で3Dプリンターをシェアすることで、会社全体のコスト削減や生産性の向上に効果をもたらしています。

従来機に比べ、ランニング・コスト(材料費)が安価なProJet3500HDMaxですが、使用する材料量は以前と比べ若干増加傾向にあるそう。それはProJet3500HDMaxの造形精度が社内で高く評価され、3Dプリンターの造形依頼件数が従来機に比べ2.5倍に増加していたことが原因でした。「私の仕事は3Dプリンターを導入することではない。より早くPDCAを回すことだ」と臼井氏。試作造形が増えたことで、より多くのアイデアの評価が出来、結果的に生産性向上に繋がったのです。

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グローバル企業ならではのメリット

シナノケンシはグローバル企業として、いつどの拠点で何が起きてもスピーディな対応が出来るよう、製造の基盤構築を徹底しています。
基本的に全世界拠点で3D CADを含むソフトウェアの統一化を実施しています。「中国以外の拠点の案件は、全て日本で設計を行います。設計データを海外で閲覧する際、同じように閲覧できなければ更なる工数が必要になり、納期に大きな影響を与えてしまいます。海外とのやり取りを頻繁に行うからこそ、ソフトウェアの互換性は重要なポイントです」と臼井氏は言います。

さらに3Dプリンターの活用は、日本と海外との意思疎通のツールとして大きな役割を担っています。事実、海外とのやりとりは言語や文化の違いにより、設計者の意図が生産者へ上手く伝わらないということがしばしば。そこで3Dプリンターで試作品を造形して手にすれば、お互い形状を確認し会話することで、具体化され理解しやすくなります。

将来的には国内のみならず、海外の各拠点においての製品試作や社員同士の意見交換等、3Dプリンターの技術を会社全体で有効活用したいと検討されています。

グローバル企業だからこその効果的な活用方法を社員が生み出し、全ての拠点で働く社員のモチベーション向上を実現しているシナノケンシのこれからの取り組みに注目です。

 

リモートアシストサービスの詳細はこちら>>リモートAssist for 3DPrinter

【企業DATA】

kenshi_logo01.jpgシナノケンシ株式会社
設立:1918年
資本金:6億円
本社:長野県上田市上丸子1078
TEL:(0268)41-1800
URL:http://www.shinanokenshi.com/japanese/

【販売代理店】

JBS_symbol.jpgJBサービス株式会社
東京都新宿区新宿4-2-23 新四curumu11F
URL:https://www.jbsvc.co.jp/

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