ProJet® 3500HD / 消費材
3Dプリンターによって広がる
「ものづくり」の可能性
創業当時に開発・発売した「万年スタンプ台」や、「シヤチハタ」の愛称で親しまれるインキ浸透印「Xスタンパー」など、オフィスの風景を変える製品を生み出し続けてきた同社。 そのものづくりの現場を最新の3Dプリンターが支えている。
製造業
シヤチハタ株式会社
3Dプリンターによって広がる「ものづくり」の可能性
オフィスの風景を変えるものづくりの精神
スタンプ台や朱肉を使わなくても、すぐに押印できるインキ浸透印「Xスタンパー」でおなじみのシヤチハタ株式会社。1925年の創業当時、同社が開発・発売した「万年スタンプ台」は、使うたびにインキを染み込ませなければいけない従来のスタンプ台とは異なり、インキを補充せずに連続して押印できる画期的な製品だった。そして、1965年には社名と同じ「シヤチハタ」の愛称で親しまれる「Xスタンパー」を開発。オフィスをスマートに、より便利に変える製品を生み出し続けてきた。そのものづくりの根幹は「こだわって、より良いものをつくる」ことにあると、第1商品開発部の柴垣幸彦部長は話す。
「製品の開発・製造はもちろん、インキやゴムなどの素材もすべて、自社で研究・開発を行っています。印面に 使用するフォントも、押印したときにインキがにじんでも読みやすいように、自社で開発したもの。ゼロの段階から自社でつくり上げることで、最高の製品をユーザーに届けることができると考えています」(柴垣部長)
これまで、国内向けのオフィス用品を中心に、多種多様なスタンプやステーショナリーを生み出し続けてきた同社。近年は海外向け・個人向け製品の開発にも力を注いでいる。筆記具シリーズ「アートライン」は、同社が創業以来培ってきたインキ技術によって、にじまず、ムラなく鮮やかな線が描けることで、世界市場でも好評。また、ネーム印にパーツを装着することで、ユーザーが好みのデザインにアレンジできる「着せ替えパーツ」は、オフィス用品を個人で購入するユーザーを想定して開発した製品だ。
制作期間短縮を支える最新ツール
幅広いユーザー層に向けた、さまざまな製品を生み出すことができるのも、自社でゼロから開発・製造を行うからこそだろう。そんな中で、海外展開やニーズの細分化によって、開発期間の短縮化が求められていると、第1開発部開発1課の太田剛俊課長は言う。
「10年前と比べると、商品の企画からリリースまで、半分ほどに期間が短縮されています。当然、開発段階で も期間の短縮化が求められています。しかし、ただ期間を短縮するだけでなく、後々の生産段階でのロスを減らすために、設計段階でより細かく詰めることも必要とされているのです」(太田課長)
期間の短縮化と、クオリティーの追求を両立させるため、現場では最新ツールがその助けになっている。例えば、以前は手書きだった設計図も、2D・3D CADを使って、より詳細に短期間で設計できるようになった。また、3Dプリンターによって、社内で試作モデルをつくることで、短期間に綿密な設計検証が行えるようになったそうだ。
「これまで、試作モデルは外部に発注していました。そうすると、出来上がるまでに最低でも一週間掛かってしまう。細かい個所まで調整して、試作を重ねるには時間も費用も掛かり過ぎていました。この試作を重ねる期間を少しでも短縮できればと、導入したのが3Dプリンターです」(柴垣部長)
同社が3Dプリンターを導入したのは2007年。今後、3Dプリンターの性能が向上していくことを考えて、最新機種に切り替えやすいリースを選んだ。
「3Dプリンター導入当時、もっとも重視したのが“いかに細密に造形モデルを出力することができるか”。開発段階では、外観を確認するだけでなく、構造的な部分まで細かくチェックする必要があるからです。パーツがしっかりと噛み合わさるか、開け閉めをスムーズに行うことができるか、0.1mm単位での比較を行います。もちろん、十分な強度があるかも重要なチェックポイント。ユーザーに長く使い続けてもらう製品 をつくるためには、デザインだけでなく、0.1mm単位で“使いやすさ” “耐久性”にこだわる必要があるのです」(太田課長)
選定のポイントはサポート材の除去性
そして昨年、導入していた3Dプリンターのリース期間が終了するのに合わせて、同社では新たな3Dプリンターの選定をスタートした。まず、同社が扱う製品のサイズに合った5社の3Dプリンターを選出した。そこから、造形モデルの精度や出力までに掛かる時間、使用する溶剤の価格などから、2社の製品を選抜。それぞれの3Dプリンターで実際に試作モデルを出力して比較、検討したところ、精度の高さから「ProJetTM 3500HD」の導入が決定した。その際の選定基準を第2商品開発部開発2課の影山伴廣氏はこう振り返る。
「選定の際には、造形モデルの出来栄えはもちろんのこと、サポート材の除去性にも注目しました」(影山氏)
3Dプリンターでは、造形モデル自体の材料であるモデル材と、空間部分を確保するためのサポート材の2種類の樹脂を使って造形する。出力後に空間部分のサポート材を除去することで、造形モデルが完成するのだ。
当時、同社で使っていた2台の3Dプリンターでは、サポート材を除去するために、アルカリ溶剤に浸ける、もしくは、ウォータージェットで剥がし飛ばす必要があった。しかし、そのための手間が掛かるだけでなく、パーツ内部のサポート材を除去しきれなかったり、水圧で繊細なパーツが壊れてしまうこともあったそうだ。
「試作段階では、0.1mm単位でパーツのサイズを変えて、複数の試作モデルを同時につくることもあります。サポート材の除去に手間取って、除去作業だけに一日を費やすこともありました。それに比べて、『ProJetTM3500HD』は、出力後にロウでできたサポート材をオーブンで熱するだけで、溶かし流してしまうことができます。手離れがよく、サポート材を除去している間にほかの作業ができることも、選定ポイントのひとつです」(影山氏)
造形の精度だけでなく、いかに手間を掛けずに使うことができるか。3Dプリンターを使い続けてきた同社だからこその選定ポイントと言えるだろう。
アイディアを形にする3Dプリンター
現在、同社が使用している3Dプリンターは、「ProJetTM 3500HD」を含めて2台。それぞれの特長を活かして、効率的な運用が行われている。
「造形の精度が高い『ProJetTM3500HD』は何度か試作を重ねて、より細かい部分をチェックしたいときに。造形スピードが速いもう一台は、外観や大体の設計を確認したいときに使っています。できることなら、精度が高く、速く出力できる一台があることが理想ですが、細密なものをつくるのにはどうしても時間が掛かってしまうのが現状です。それでも、外注して一週間ほど掛かっていた試作モデルが、自社の3Dプリンターを使えば一晩ほどで出来上がってしまうわけですから、作業スピードは飛 躍的に向上しました」(太田課長)
同社では、日中に設計したものを終業前、3Dプリンターにセット。翌朝、出力された造形モデルを確認しながら、設計の修正などを行う作業サイクルが出来上がっていると言う。
「設計したものを、すぐに形にできることが3Dプリンターの魅力です。以前であれば、試作モデルをつくることを躊躇したような、ちょっとした思いつきでも形にできるようになりました。そのことで、アイディア商品を生み出しやすくなったように感じます。また、会議でのプレゼンテーションでも、紙資料だけのときと比べて、実際の試作モデルを見ながら、より具体的な話し合いが行われるようになりました」(影山氏)
進化を続ける、3Dプリンターの可能性
「ProJetTM3500HD」を導入してから、2カ月。今後、同社では「ProJetTM3500HD」を使って、新たな製品開発を行っていきたいと語る。その中で今後、3Dプリンターに望むことを聞いてみた。
「現在、使用できるモデル材では、インキに耐性のあるものがありません。PPやPETでも成形できるようになれば、インキを使っての耐久性もチェックできるようになるので、さらに“こだわって、より良いもの”をつくることができると考えています。『ProJetTM3500HD』では、新しいモデル材がリリースされたとき、機種変更することなく、ソフトウェアのアップデートのみで使うことができるのも特徴。新しいモデル材がリリースされるのを期待しています」(柴垣部長)
今後、3Dプリンターの機能向上とともに、ますますものづくりの可能性は広がりそうだ。
【企業DATA】
シヤチハタ株式会社
設立:1941年
資本金:7億3758万円
本社:愛知県名古屋市西区天塚町4-69
URL:http://www.shachihata.co.jp/
【販売代理店】
JBサービス株式会社
本社:東京都新宿区新宿4-2-23 新四curumu 11F
URL:http://www.jbsvc.co.jp/index.html
JBグループ情報誌Link Vol/213掲載