ProJet^® MJP 2500Plus / 航空・宇宙

人と環境に優しい航空利用社会の実現に向け
～空港周辺の騒音被害縮小への3Dプリンター活用とは～

宇宙航空研究開発機構（以下：JAXA）といえば人類にとって未知の空間である宇宙開発や国際宇宙ステーションに日本人宇宙飛行士を派遣して活躍しているニュースを耳にする機会が増え、ここ10年では毎年の様に宇宙で活躍している宇宙飛行士を輩出しているイメージがあるかと思います。
あるいは、種子島宇宙センターから打ち上げられる、H-ⅡAロケットのニュースで心をときめかせている人は少なくないはず。

宇宙開発のイメージがあるJAXAですが、航空技術の研究開発を通じて、安心で豊かな航空利用社会の実現に貢献すべく、日々研究に取り組んでいる部門があります。
ProJet^® MJP 2500Plusは、私達に身近な空港周辺の騒音被害縮小のための“エンジン騒音低減”技術開発の研究に役立っているのです。

宇宙航空研究開発機構様

エンジン騒音低減技術開発とProJet^® MJP 2500Plus

航空機に搭載されているターボファンエンジンは、大きく分けて、ファン / 圧縮機 / 燃焼器 / タービン / 排気ノズル等の要素で構成されています。エンジンは入り口から空気を吸い込み、各要素の作動によって推進力を得ますが、同時に騒音の発生も伴います。エンジンからの騒音は、ファンと排気ジェットによるものが大きく、特に航空機の離陸時に最大となります。

JAXA航空技術部門航空環境適合イノベーションハブでは、航空機のエンジンから発生する騒音を低減する「吸音ライナ」の性能向上研究にProJet^® MJP 2500Plusを活用しています。

吸音ライナの形状研究にかなう形状再現性

エンジンから発生する騒音を低減するために、エンジンの入り口および出口に装着される「吸音ライナ」。吸音ライナは、多数の微細な穴があいた表面板と背後のハニカム構造のセルで構成され、ヘルムホルツ共鳴^※によって特定周波数の音を吸音する特性を活かし、騒音低減を実現します。

※ヘルムホルツ共鳴：開口部（穴）を持った容器の内部にある空気がバネとしての役割を果たし、共鳴（共振）することで音を発生する装置

この吸音ライナは一般的にはアルミで製造されており、表面の穴形状や背後のハニカム構造を工夫することにより吸音性能が向上させることができますが、最適な形状を見つけるには様々な試作を行って試験しなければなりません。

JAXAでは、3Dプリンターが一般的に普及される前から試作に活用し、日々研究を重ねていたのです。

3Dプリンターの試作品を用いた試験は、主に以下の3つの工程で行っていきます。

① 吸音ライナの一部を造形し、基本的な吸音率を調べる垂直入射管試験

② 流れのある環境における吸音性能を調べるフローダクト試験

③ 小型のエンジンに吸音ライナを装着してエンジンの音響性能を調べる屋外騒音試験

3Dプリンターを用いることにより手軽に試作品を作成でき、様々な形状試験が行えますが、より正確な研究結果を出すためには、形状の“再現性”が重要になります。
ProJet^® MJP 2500Plusでは、今まで使用していた機種よりも高い形状再現性を有しており非常に有効的に活用いただいています。

微細な孔形状と、ハニカム構造でも手間なくサポート除去できるProJet^® MJP 2500Plus

JAXAにおける吸音ライナの研究で活用されているProJet^® MJP 2500Plusですが、最大の特徴は、超微細な造形精度とサポート柱が立たないWAXサポートです。これにより、微細な孔形状と、複雑なハニカム構造を同時に実現することが可能になりました。ProJet^® MJP 2500Plusは、高い再現性と容易な後処理、その両方の要件を叶えた3Dプリンターです。